お天気鳥たちの眠るところ【賃貸・鎌倉・2LDK】

「お天気鳥さんがうちの近くに住んでいるみたいなの」

ある日の食卓で娘が、しばらく貯めていた貯金箱を割ったような口調でそう教えてくれた。

ここ北鎌倉には晴れの日だけピーカラッピーカラッと元気に泣く鳥がいるのだが誰もその姿を見たことがなく、この地域では一定の関心を得ているのだった。

地元小学校の生徒の中には、我こそは一番に見つけてやろうと休日を使って捜索するチームすらあるのだが、みな成果を上げられずに卒業してしまう。

ついこの前ね、と娘はひそひそ声で話し出す。

「朝鳴き声がしたからベランダの方に行ってみるとね、少しだけ目が合ったの、マスタード色だったわ」

「すぐにね、うちの裏のお山の方に飛んでっちゃったの。でもしばらく近くから鳴くのが聞こえたの、ほら、岩に空いたおっきな穴があるでしょ。きっとあそこがお家なのよ。」

それはとても素敵だなあ、と僕は思った。

お天気鳥のご近所さんになんてなろうと思ってなれるものじゃない。

次晴れた日には、早起きをしてご挨拶でもしてみようかな。そう思って僕は、天気予報を調べた。





北鎌倉は自然の中に住宅街がある。住宅街の中に自然があるのではなく、お寺や住居やお店が木や草や動物たちの居場所の一部を少しだけお借りしているような雰囲気。

もちろん春や秋の自然の美しさは魅力的だけれども、冬にもこんなに色があるんだと目を奪われるような色彩の繊細さや季節の空気感を毎日肌で感じられる場所です。