雨降りの街、始まりのファンファーレ【賃貸・マンション・１LDK】

数日前から小雨が降り続いてる。

季節外れの暑さに沸騰していた街の熱気はすっかりの流され、高い湿度でもったりとまとわりつく空気が建物と建物の間に漂っている。



逗子銀座商店街の自転車屋の前を通り過ぎると、ふとラジオから流れるファンファーレに耳を奪われた。

それは学生時代に、市民球場のスタンドからで聴いたものだった。

同じ教室で一緒になってふざけあっている友人が、妙に大人っぽくて尊敬と嫉妬の複雑な感情を初めて知った夏の日を思い出す。



油を売っていないで、そろそろ夕飯の買い出しに行かなくては。

急ぎ早に歩き出すと、脇から制服を着た二人が傘もささずに追い越していく。

おそらく二人は恋仲で、互いに顔を見合わせ楽しそうに笑っている。



「雨なんて降らなければいいのに」

「そんなのもったいないじゃない、楽しまなくちゃ。」

君はいつもそうやって傘もささずにはしゃいでみせた。



今だからわかる。雨の日もきっと悪くない。